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日本語教育能力検定試験合格を目指して独学でがんばる人の応援ブログ

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試験Ⅲの記述問題対策

 今日は、試験Ⅲの記述問題対策を採り上げます。最初に、下の表をご覧ください。

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 これは、日本語教育能力検定試験の主催者のJEES(日本国際教育支援協会)がHPで発表している、令和2年度試験の結果概要の一部です。

 一番下の試験Ⅲ記述式の平均点は11.5点(57.4%)、標準偏差は3.3点(16.6%)、最高点は20点、最低点は0点となっています。

 これから分かることは、記述問題の難易度が高いことと、できた人とできなかった人のバラツキが大きいことです。

 面白いことに、この傾向は試験Ⅱも同じでした。つまり、聴解問題と記述問題は、合否を大きく左右しやすいと言えるのではないでしょうか。逆に言えば、この分野を制覇すれば合格に大きく近づくと言えます。

 実際、私の場合は、この記述問題のおかげで合格できたと思っています。当初、試験勉強を始めたころは、全く書けませんでした。原稿用紙の半分ほどしか字が埋まりませんでした。

 しかし、試行錯誤の末に要領を会得してからは、内容的にも自分でも納得できるものがほぼ原稿用紙いっぱいに書けるようになりました。試験当日も、ラッキーな事もあって、ひょっとして満点取れたのではと思うような解答が書けました。

 世の中にはたくさんの記述問題のノウハウが出回っています。どれを信じるかはあなたの問題ですが、これから紹介する私の秘策もぜひ参考にしてください。

 

1.「どう書くか」ではなく「何を書くか」

 巷の指南書では、どう書くかに多くのページが割かれています。例えば構成です。「主張-根拠-まとめ」といった流れです。でも、以下の写真を見てください。

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 これらは、上から順に平成28年度から令和元年度までの記述問題の模範解答です。著作権の問題があったのでボカシています。

 過去10年分の過去問を見て分かったことですが、毎年問いが2つあります。そして、赤枠で囲った①が主問に対する答え(主張)の部分、②が副問の答えの部分です。

 これを見て分かるように、必ずしも「主張-根拠-まとめ」といった流れになっていません。なぜなら、副問の答えが主問の根拠になっていることが結構あるからです。

 ですから、私は原稿の構成はあまり気にしなくていいと思います。それよりも「何を書くか」です。実は、これが大問題なのです。

 「ない袖は振れない」という言葉があります。記述問題も同じです。知識や語彙のストックがないと全く筆が進みません。マークシート問題に要する知識と記述問題に要する知識は全然質が違います。

 では、どうするか。私は、下のような表をエクセルで作りました。教授法や教室活動について、出題されそうなテーマを選んでそれぞれ意義と留意点を書き出しました。後は、あるだけの知識や経験談を交えて膨らませるという算段です。

 そして実際に、各テーマについて自分で設問し、模擬試験のようにやってみました。例えばシラバス・デザインなら、「シラバス・デザインに際して、あなたはどのような調査をしますか。調査における留意点とともに400字程度で記述してください。」といった問題を作り、自分で答えるのです。

 これはすごく勉強になりました。あやふやな知識や理解では、とても文章にならないからです。逆に言うと、自分の分かっていることとそうでないことがはっきり分かり、問題と対策が明確になります。また、アウトプットすることで記憶も強化されます。

 こうして25のテーマを一つずつクリアしていきました。

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 本番ではまんまとこの作戦が当たりました。表の№24の「やさしい日本語」が出たのです。ちょうどその頃、ボランティアで教えていたベトナム人初級学習者に動詞の「活用」や「音便」をどうやって説明しようか「やさしい日本語」を模索していたこともあって、私にとっては絶好球でした。

 今年もこの表の中から出るとは何とも言えませんが、もし出なかったとしてもけっして無駄な努力にはなりません。なぜなら、出題範囲が限られていますので、応用が利くテーマが多いからです。

 例えば「日本語の乱れ」や「ゆれ」についてポイントを掴んでおけば、「ら抜き言葉」や「新方言」などにも対応できます。もちろん、その逆も可です。

 また、当然のことですがマークシート問題の出題範囲でもあるので、そちらの試験対策にもつながります。

 

2.採点者の立場に立って書く

 当たり前のことですが、採点者が気に入るような答案でなければいい評価は得られません。でも、あまりそのことを考えていないのではと思われる指南書が散見されます。

 例えば、原稿用紙の書き方です。本文の書き出しや、段落の変わり目(改行)は最初の一マスをあけるというルールがあります。

 しかし、某ア〇ク社の出版物は、一貫してこのルールを否定しています。そのように書く必要がないと言っています。段落に分ける必要もないと言っています。

 でも、本当にそうでしょうか。試しにみなさん、その某社の「合格するための・・」という本の解答例を見てください。

 私には読みにくて仕方ありません。改行や段落がないので、どこからどこまでが主張で、根拠はどの部分かということが、とても読み取りにくいのです。

 これは採点者にとっても同じです。採点者が私と同じようなことを思えば、マイナス評価につながることはあってもプラスになることはありません。

 それに、先ほどの過去問集の模範解答例を見てください。ボケてても、きちんと段落を切って、かつ最初の一マスがあいていることが分かると思います。検定試験主催者がこの原稿ルールに従っている以上、私たちも従わないわけにはいきません。

 次は漢字です。みなさん、流暢、丁寧、語彙、変遷、慇懃、隠喩、範疇、推敲などの漢字がすらすら書けますか。私は全滅でした。

 でも本番では、これが書けないとちょっと問題です。なぜならみなさんは日本語教師だからです。外国人に漢字を教える先生が、こんな漢字も書けないのかと思われたらまずいですよね。記述問題の出題範囲に目を通し、書けない漢字があったら書けるようにしておきましょう。

 最後は「オウム返し」です。正確に言うと少し違いますが、出題者が用いた言葉や語句をできるだけ使って解答を書きましょう。

 人間は、自分と同じ言葉を使って返されると共感性をより感じるようです。

 例えば、あなたが「いい天気ですね」と発して、「本当に、雲一つないいい天気ですね」と返されるのと、「はい、快晴です」という返事では、どちらに好感をおぼえますか。前者の方が「共感してくれた」という気がするのではないでしょうか。

 出題で用いられた言葉や言い回しをできるだけ使って解答しましょう。採点者の高評価につながります。それに、そうすることによってこちらも言葉探しの手間が省け、原稿用紙が格段に埋めやすくなるという一石二鳥にもなります。

 最後に、またプレゼントのお知らせです。上述の記述問題対策エクセルシートをご希望の方に差し上げます。エクセルファイルなので、ご自分で自由に加工できます。当ブログのお問い合わせフォームにて請求ください。メール添付にてお送りします。