赤本(第5版)16pに書いてあるように第1部は出題頻度がとても高く、また試験ⅠからⅢまでに渡って出題されますから、最重要分野と言っていいでしょう。
特に第1部の過半数を占める文法関係は日本語教育の要なので、そこを疎かにしては検定試験合格の道はありません。万が一通ったとしても、その後の日本語教師としての活躍は厳しいものがあるでしょう。
前回述べたことと重複する部分がありますが、第1部の読みかたを書きます。
1.記憶より理解優先で読む。
何が重要か、どう覚えたらよいか、自分がどこまで分かっているかというのは、赤本を読むだけでは十分に分かりません。過去問に向き合って初めて分かります。
したがって、今の段階では前にも言いましたように、覚えることにセンシティブになる必要はありません。それよりも、書いてあることを理解することに努めましょう。
また、それほど重要でないところは、理解できなくても気にせず読み進めてください。過去問にぶち当たれば、また新たな切り口が見えてきます。
2.暗示的知識を明示的知識に変換する。
私たちは日頃、文法など考えずに日本語を使っています。それは、子供の頃から無意識に習得してきた日本語の知識があるからです。これを暗示的知識と言います。
しかし学習者に教える場合は、この暗示的知識をそのまま伝えることはできません。暗示的知識は、言葉で説明された知識ではないからです。
したがって私たちは、自分の持っている暗示的知識や、新たに赤本などから得た知識をすべて明示的知識として、つまり言葉で説明できる知識にして学習者に伝える必要があります。
そのためには、あなたは赤本を検定試験合格のために読むのではなく、学習者に説明できるようになるために読むという意識を持った方がいいでしょう。
3.自分ならどう教えるかと考える。
教育という仕事は、いろいろな場面で教え方が問題になります。日本語教育も例外ではありません。動詞の活用、助詞の「は」と「が」、ら抜き言葉、待遇表現等々、随所に教え方の議論があります。
こういうときあなたは、単に赤本に書かれた説明を読むだけでなく、自分ならどう教えるかという視点を持ってください。
なぜなら、日本語教師として教壇に立ったとき、必ずそれが問われるからです。そしてそのとき、急いで教科書を引っ張り出してきても、ほとんど役に立たないからです。
もちろん今、「動詞活用はこう教えよう」と考えても、そのまま通用することはないかもしれません。学習者の状況によって変わるからです。
ですが、この姿勢が大事なのです。常にこういう考えを持っていれば、状況に応じていろいろなアイデアが湧き出てきます。
それに、検定の試験Ⅲ、記述問題の格好のトレーニングになります。記述問題の問いは、100パーセント「あなたはどう教えるか」「あなたはどう考えるか」です。
そしてその答えには、完全な正解はありません。求められているのは、あなたが論理的に裏付けされた考え方ができるかということです。
日頃からこういう意識で赤本を読んでいれば、特別な記述問題対策をしなくても、いい点が取れるでしょう。